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エクマン層 (Ekman layer)

基礎方程式として、以下の運動連続方程式を与える。

$\displaystyle \DP{u}{t}+u\DP{u}{x}+v\DP{u}{y}+w\DP{u}{z}-fv=-\DF{1}{\rho}\DP{p}{x}$     (6b.208)
$\displaystyle \DP{v}{t}+u\DP{v}{x}+v\DP{v}{y}+w\DP{v}{z}+fu=-\DF{1}{\rho}\DP{p}{y}$     (6b.209)
$\displaystyle \DP{u}{x}+\DP{v}{y}+\DP{w}{z}=0$     (6b.210)

平均流部分とそこからのずれに分けて、更に平均を取ると、(6b.1) と(6b.2)は
$\displaystyle \OL{\der{}{t}}\OL{u}-f\OL{v}=-\DF{1}{\rho_0}\DP{\OL{p}}{x}-
\left(\DP{}{x}\OL{u'u'}+\DP{}{y}\OL{u'v'}+\DP{}{z}\OL{u'w'}\right)$     (6b.211)
$\displaystyle \OL{\der{}{t}}\OL{v}+f\OL{u}=-\DF{1}{\rho_0}\DP{\OL{p}}{y}-
\left(\DP{}{x}\OL{u'v'}+\DP{}{y}\OL{v'v'}+\DP{}{z}\OL{v'w'}\right)$     (6b.212)

ここで、計算の際、
  1. 流体内で密度は一定であるというブシネツク近似(Bousinesq approximation)を用いた。これは大気下層と海洋中で有効な近似であり、 音波を除去できる。
  2. (6b.3)を使って、レイノルズ応力(Reynold's stress)の項 を導出した。
また記号として、
\begin{displaymath}
\OL{\der{}{t}}=\DP{}{t}+\OL{u}\DP{}{x}+\OL{v}\DP{}{y}+\OL{w}\DP{}{z}
\end{displaymath} (6b.213)

を意味する。

プラントールの混合距離理論(Prandtl's mixed length theory)を用いて、乱流 フラックスの項を平均流で表現する。これをK-theoryという。また、このように して方程式を閉じたものにする問題をクロージャー問題(closure problem)とい う。モデル研究においては、乱渦を平均流でパラメタライズ(parameterize)する 問題という。

まず、仮定として、乱渦による混合は鉛直方向にのみ起こるとする。平均流の鉛直 構造は乱流フラックスに依存すると考え、

\begin{displaymath}
\OL{u'w'} = -K\DP{\OL{u}}{z} \\
\OL{v'w'} = -K\DP{\OL{v}}{z} \\
\end{displaymath} (6b.214)

と書けるとする。すなわち、風の流れの鉛直シアーがあれば、この大きさに比例して シアーを解消しようとする乱流フラックスが存在することになる。

Prandtlはこれを導く考え方として、分子の平均自由行程を模した混合距離理論を 提案した。この考え方はしかし必ずしも現実的とは限らない。

ともかく、(6b.1), (6b.2)は(6b.3)およ びそのほかの仮定から

$\displaystyle \OL{\der{}{t}}\OL{u}-f\OL{v}=
-\DF{1}{\rho_0}\DP{\OL{p}}{x}+K\DDP{\OL{u}}{z}$     (6b.215)
$\displaystyle \OL{\der{}{t}}\OL{v}+f\OL{u}=
-\DF{1}{\rho_0}\DP{\OL{p}}{y}+K\DDP{\OL{v}}{z}$     (6b.216)

今、移流は小さいとし、右辺第1項はエクマン層外の地衡風(流)を表現してい るものとすると、(6b.9)と(6b.10)は
$\displaystyle -f(\OL{v}-\OL{v_g}) = K\DDP{\OL{u}}{z}$     (6b.217)
$\displaystyle f(\OL{u}-\OL{u_g}) = K\DDP{\OL{v}}{z}$     (6b.218)

但し、 $u_g$, $v_g$$z$に依存しない。大気のエクマン層は境界条件として、
$\displaystyle \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u(0) \\  v(0)
\end{array}\right)$} = \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
0 \\  0
\end{array}\right)$}$     (6b.219)
$\displaystyle \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u(\infty) \\  v(\infty)
\end{array}\right)$} = \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u_g \\  v_g
\end{array}\right)$}$     (6b.220)

また、海洋のエクマン層は境界条件として、
$\displaystyle \rho_0K\der{}{z}\mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u \\  v
\end{arra...
... = \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
\tau_x \\  \tau_y
\end{array}\right)$} (z=0)$     (6b.221)
$\displaystyle \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u(-\infty) \\  v(-\infty)
\end{array}\right)$} = \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
0 \\  0
\end{array}\right)$}$     (6b.222)

を課して(6b.11)および(6b.12)を解くことから得られる。

さて、(6b.11)と(6b.12)は、複2階の常微分方程式に 帰着される。

\begin{displaymath}
\DF{d^4}{dz^4}\mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
\tilde{...
...begin{array}{c}
\tilde{u} \\ \tilde{v}
\end{array}\right)$}
\end{displaymath} (6b.223)

但し、 $\mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u(z) \\ v(z)
\end{array}\right)$}=\mbox{$...
...(
\begin{array}{c}
\OL{u}-\OL{u_g} \\ \OL{v}-\OL{v_g}
\end{array}\right)$}$と する。よって、$u(z)$, $v(z)$
$\displaystyle \exp(rz)\cos(rz)$     (6b.224)
$\displaystyle \exp(rz)\sin(rz)$     (6b.225)
$\displaystyle \exp(-rz)\cos(rz)$     (6b.226)
$\displaystyle \exp(-rz)\sin(rz)$     (6b.227)

の線形結合で書き表される。但し、 $r=\sqrt{\DF{f}{2K}}$とする。

まず、大気の場合、座標は右のように取り、境界条件(6b.15)が課 されるので、(6b.19)は解として不適切。(6b.20)を満 たすようにすると、解は

$\displaystyle u(z) = u_g (1-e^{-rz}\cos(rz)) -v_ge^{-rz}\sin(rz)$     (6b.228)
$\displaystyle v(z) = v_g (1-e^{-rz}\cos(rz)) +u_ge^{-rz}\sin(rz)$     (6b.229)

となる。この解をエクマン螺旋(Ekman spiral)という。また、$1/r$はエクマン層の 厚さ(Ekman depth)と呼ばれ、自由大気との境界を表す。

次に海洋は境界条件(6b.16)のように海洋上を吹く風応力によって 駆動される。バルク式(Bulk's aerodynamic formula)によると、風応力は、

$\displaystyle \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
\tau_x \\  \tau_y
\end{array}\rig...
...C_D \sqrt{u^2+v^2} \mbox{$
\left(
\begin{array}{c}
u \\  v
\end{array}\right)$}$     (6b.230)
$\displaystyle {\rm SH} = -\rho c_p C_H \sqrt{u^2+v^2} (T-T_0)$     (6b.231)
$\displaystyle {\rm LE} = -\rho L C_E \sqrt{u^2+v^2} (q-q_0)$     (6b.232)

但し、$C_D$はバルク係数(Bulk coefficient)と呼ばれ、粗度(roughness)と境界層 リチャードソン数(boundary Richardson number)により決定される無次元数である。 風応力はベクトル風速とスカラー風速の積に比例する。風速の自乗に比例するのは、 乱流理論にある仮定をおいて導出される。

さて、中緯度海洋上の風応力ベクトルは海洋の駆動源として海表面に置き換わる。 これが(6b.16)で表現されている。海洋の境界条件 (6b.17)により、解として(6b.21), (6b.22)は不適切である。よって、解は境界条件により、

$\displaystyle u(z) = \DF{e^{rz}}{2\rho Kr}
\left\{ (\tau_x+\tau_y)\cos(rz) + (\tau_x-\tau_y)\sin(rz) \right\}$     (6b.233)
$\displaystyle v(z) = \DF{e^{rz}}{2\rho Kr}
\left\{ (\tau_x+\tau_y)\sin(rz) - (\tau_x-\tau_y)\cos(rz) \right\}$     (6b.234)

ここで、 $(u_g, v_g)=(0,0)$とした。実に面白いことに、風応力として $\ve{\tau}=(\tau_x, \tau_y)$で与えても、表層でさえ海流が $(u(0),v(0))=(\tau_x+\tau_y,-\tau_x+\tau_y)$となる。

更にエクマン輸送(Ekman transport)を考える。これは90右に曲がる事がわ かる。これは(6b.30)と(6b.31)を$(\infty,0]$区間で$\rho$ を乗じて積分する。

$\displaystyle \int_{-\infty}^{0} -\rho_0fv dz = \int_{-\infty}^{0} \rho_0K\dd{u}{z}dz$     (6b.235)
$\displaystyle \int_{-\infty}^{0} \rho_0fu dz = \int_{-\infty}^{0} \rho_0K\dd{v}{z}dz$     (6b.236)

エクマン輸送を $\ve{M}=(M_x,M_y)$で表すと、

$\displaystyle M_x = \DF{\rho_0K}{f} \int_{-\infty}^{0} \rho_0K\dd{v}{z}dz =
\DF{\rho_0K}{f} \left.\der{v}{z}\right\vert _{z=0} = \DF{\tau_y}{f}$     (6b.237)
$\displaystyle M_y = -\DF{\rho_0K}{f} \int_{-\infty}^{0} \rho_0K\dd{u}{z}dz =
\DF{\rho_0K}{f} \left.\der{u}{z}\right\vert _{z=0} = -\DF{\tau_x}{f}$     (6b.238)

よって、90右に曲がることが分かる。


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Masaru Inatsu
平成17年11月30日